歳時記|2月 如月(きさらぎ)

立春

二月三日の節分を境に、暦の上では春となります。かつて季節の境目には、邪気が出るといわれており、各地で様々な行事があります。節分の豆まきは、大豆が邪気払いに効果がある所以です。大豆は、晩秋に収穫されて蛋白質が不足する冬場の貴重な食材です。立春に豆腐を食べる習慣も同じ意味合いです。

大豆の保存食といえば古来からある高野豆腐です。以前は厳寒期に氷点下になる外気温を利用して農家の副業で屋外で作られていました。今では工業的に衛生レベルの高い工場で一年中作られています。かつては水戻しの際に洗ったのが、製法が代わって不要となり使いやすくなりました。だから粉末タイプも出来たんですね。また岩手の二戸に行ったときは、豆腐が冷凍のまま売られていました。聞けば寒過ぎて干した豆腐が昼間でも融けないからこれが普通なんだそうです。長野では、竹簾で巻いて茹でたこも豆腐など、どれも冬場の貴重なタンパク源として日本の食卓を支えてきました。

まさに病気を邪気と考え、健康を願った先人の知恵ですね。大豆に感謝。

南三河が誇る食文化

私たちの会社がある地域は西三河といいますが、この地域の食文化を説明するのに欠かせないのが、知多半島エリアの酢や酒などの醸造文化。そこから、碧南市の白醤油や味醂、さらに岡崎市や西尾市では豆味噌へと食文化が広がっていきました。

その背景には、明治用水という水路が整い、米・麦・大豆が豊富に作られ、塩田もあったことで大切な資源を保存する文化が栄えたこと。そして、販売網となる江戸への海路が知多エリアから繋がっていたこと。それらが重なり、この地域の醸造文化、食文化が培われてきました。この三河と知多地域を総称して、私たちは「南三河食文化研究会」と呼び、定期活動をしています。

醸造といえば、味噌も味醂も酒も、時間をかけてゆっくり仕込むもの。寒いこの時期には、味噌造りなどの寒仕込みが始まります。こうした手間暇込めた伝統の味と技術も継承していきたい。それを商品や活動を通じて、皆さんに伝えること。食文化は私たちが歩んできた生きる証なのですから。