歳時記|1月 睦月(むつき)

小雪

太陽暦の1月1日を元旦として、現代の日本では正月を迎え、この日を境に新たな想いでの一年が始まります。
先日、長野の善光寺にお参りした時、本堂のお戒壇巡りで「極楽の錠前」を触ると生まれ変わるという体験をしました。これは、漆黒の闇の中で擬似的に死を体験することで悟ることだと聞きました。簡単な体験で現世で生まれ変われるという発想は、日本人的でうれしいですね。

昔から日本人の初物好きです。お正月は初物が特に多くて「初詣」「書初」「初夢」「初売」などと「ハレの日」の固まりです。そしておせち料理に雑煮、お屠蘇とごちそうをたくさん食べたのも、「食」がいかに大事な行為だったかが窺い知れます。最近では、ハレとケの日の差が薄くなり、高揚感のある食が薄れているようで残念です。ある意味では「一億総中流意識」や「バブル崩壊失われた20年」のように物心とものにフラット化した社会が要因なのでしょうか。耳を覆いたくなるような人道を外れた弱いものいじめ的な風潮の要因がこれならば考え直したいものです。

元号改定が迫る平成日本という国が今一度「極楽の錠前」を触れて生まれ変わる時期かもしれません。一億総お戒壇めぐりですね。

小正月のくらし

正月が明け、2週間ほど経つと「小正月」が来ます。「女正月」とも呼ばれ、この日には小豆粥を食べる風習があるそう。この風習は紀貫之の「土佐日記」や清少納言の「枕草子」にも記述されているほど古くから伝わるもので、小豆の赤色は太陽・生命を象徴し、魔を祓ってくれるといういわれもあります。

誰もが慌しく過ごした正月から、いつもの日常に戻りやっと一息つけるのがこの小正月の時期。そんな日に、お粥を食べてゆっくり過ごしましょうと始まったのではないでしょうか。実際に現代でも、年末の忘年会から宴会続きで食生活が乱れはじめ、身体にも疲れが出てくる頃でしょう。

小豆粥は、正月のぜんざいで余った小豆をご飯と一緒に炊くだけで簡単に出来上がります。色合いも紅白でめでたく新春にぴったり。さらに、小豆には効果的な栄養素がたっぷり詰め込まれており、身体も良い方にサポートしてくれます。食物繊維はごぼうの3倍含まれ、他にも抗酸化力の高いポリフェノールやミネラルも豊富。今年最初の邪気払いに、小豆粥は大変おすすめです。ホッと温まるひとときを楽しみながら、1年の健康を願いましょう。